翼のない天狗

 ヒメは水中にあった左手を、清青に見せるかの様に持ち上げて開いた。小さな球がある。その琥珀色は、なんやかんやと笑いかけ話しかける、友の瞳と同じ色だ。
 はっと気付いて、清青はヒメを睨む。

 ゴオオゴオオ

「それは」

 ゴオオゴオオ

「友の魂か」

 ゴオオゴオオ

 ヒメは口の端をあげて肯定した。右手でソレを摘み、ゆっくりと口へ運ぶ。
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