翼のない天狗
清影様。
あいつは最後の最後に、欲しかったものを手に入れました。
瀧へと真っ逆さまに落ちて行く中で、まず、清青の体に抱き着いていた氷魚の体が、水となって消えて行った。朝日を受けて、水となった氷魚は輝いていました。
その様子はまるで、清青に白い翼が生えたようだった。若い頃、あんなに欲しがっていた翼を、清青はやっと手に入れた。俺は胸が熱くなった。ただ、それを与えたのが氷魚だっていうのが、やっぱり悔しいなあ。
清影様。
そして、清青の体も、滝壺に落ちる前に水に消えてしまったんだ。氷魚のやつ、うまく独り占めしたとでも思っているのでしょう。
そっちに行ったら、また、会えますかね。
いつか、清青に。
結実――続・忌譚
『翼のない天狗』 完結