翼のない天狗
 また返歌。

 つぼむなればやがて開けるその花を
  先ず飾りうはたがわざならむ
 今つぼみなのであれば、もうすぐ花がさくのでしょう。その花を最初に飾ることが出来るのは誰の務めであろうか。私にその務めをさせては下さらないか。

 更に女。

 夏の夜のその短きをわかりつつ
  逢う紫の君を待つ宵
 夏の夜は短いのをあなたも知っているでしょう。私は恋人を待つように、初めて逢うあなたを待っています。

「気の早いこと……」
 ふっと笑みを零し、歌を懐に仕舞う。紫青は親の介した女の屋敷へ入った

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