翼のない天狗

「お前は我のような天狗にはならん」
 詳細を尋ねると、清影は声を上げて笑った。
「清青よ」
 続く。
「お前はまだ、己のことが解っておらんのだ」
「私のこと?」

「お前には力がある」
 清青の背中を何かが走る。それほどに強い言葉。

「私にはない力だ。他のどの天狗も持たぬ力、それをお前は持っておる」

「何なのですか、私の力とは……父様!」
 父はそれ以上のことを言わない。いつもの朗笑だけが、風をおこす。

 ふとその笑いさえ消えた。

 冥王寺に人が来た。
 一人。この気配は。
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