翼のない天狗
「しかし実原隆行の子、ではどうしても筋の通らなかったことが、得心できるようになりました。天狗の仔であれば、私のこの奇抜なかたちにも理屈ができます」

「母上、」
 子は、母親の目を見ない。
「私は父様に、父様のような天狗になりたいと申しておりました」
「紫青…」
「帝の子は帝に、蔵人の子は蔵人に。ならば天狗の仔が天狗になるのも同じでありましょう」
「紫青は…都が、人がお嫌いか」
「はい」
「何ゆえ」
「私を見るときの目が、違うのです」
 風がにわかに強くなる。清青はその風から父の意を読んだ。そして、すっと立つ。
「母上、父様がいらっしゃいます。久方ぶりに母上と話がしたいとおっしゃるので、私はこれで」

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