翼のない天狗

「清青様…」
「ハハ、魂を喰わないでくれ。大事な輩だ」
 氷魚にそう言い、清青は立ち上がる。次の瞬間。
「太助、弥平、見廻りはどうした?」
 ぬ、と二人の背後に清青。太助が持っていたはずの手燭に火をつけて持っている。
「しっ…紫青様?」
「い、今、中にいたはずでは」
 慌てふためく二人に、清青は口元だけで笑う。

「盗み見とは感心ならぬな」
「申し訳ご…」
「廻りを続けよ」

 ヒュウウと夜風。
「ちと、風が出て来たな」

 風は明かりを奪う。ぼ、と火は消え、同時に清青も消えた。
「…!?」
 そして、今太助と弥平が覗いていた格子の隙間の向こう側に清青が。
「早う」
 ひいい、と二人は駆けて行く。 

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