翼のない天狗
かくして、風は止んだ。
太助と弥平は、弓矢を投げ出し、目に涙を浮かべ、一目散に山を降りた。
ドドドドドド
深山と黒鳴は別の岩陰から始終を覗いていた。
「清青……」
体が浮かんでこない。
しばらくして黒鳴は滝の上から下流にかけて、一通り飛んで来たが、やはり清青の体はなかった。
《下、へ行ったか……》
「だと良いが……」
《どうする、儂は取り敢えず清影殿の処へ行くが》
「……もう少し、待ってみるさ」
深山はそう言って、滝壺に視線を落とした。