翼のない天狗
「申し訳ございません」
申し開きなどできる筈もない。おのれが矢を放った相手こそ、探していた紫青だったのだ。太助と弥平はひたすら主夫婦に頭を下げた。
「なるべくしてなったこと。仕方がない」
「しかし、隆行様……」
「浮かんで来なかったのなら、もしかすると紫青のことだ、どこかで生きているやも知れぬ」
そう言い置き、隆行は去った。その後ろ姿を見送り、芳子は二人に向き直る。
「……紫青と天狗のことは口外しないように」
「もちろんです」
「わかりました」
「それと」
加える。
「いつ紫青が帰ってきても良いように、今まで通りにお願いしますよ。あの子を待ちましょう」
希望を。