翼のない天狗
「よくいらっしゃった、清青殿」
汪魚は口元に笑みを、目元に冷淡さを携えて清青に言う。
「私は人魚の長、汪魚。氷魚の兄だ」
「……」
清青は眉を曇らす。
氷魚の兄ということはつまり。過ちを。
「氷魚は、こんな物を隠しておった」
汪魚がおもむろに懐から取り出した物。それは。
清青の烏面。
「なぜそれが……」
「清青殿、そなたが犯した罪をここで償ってもらおう。我々は無益な殺生はしない。よってその命を奪うことはしない……二十年の禁固だ」
「待て、私の犯した罪とは……?」
汪魚は静かに息を吐いた。
「我が妹をたぶらかした」