闇夜ニ咲ク華
「なぁ、此処はどういう所なんだ?
説明もなしに入るってのは気が引ける」
あたしは前を歩く山崎の背に向かってそう呟く。
山崎は振り返って笑いながら説明を始めた。
「せやな、姉ちゃんにはまだ言うてへんかったわ。
此処は"新選組"。京に住まう鬼と狼が暮らすとこや
」
鬼……?
狼……?
そんなの、
「何処にもいないじゃないか」
それに、全然その説明じゃ新選組ってものがどんな組織なのか伝わって来ない。
「ま、冗談や。
今のは町での言われようやからな。
新選組っちゅーんは、将軍様の警護を目的に組織され、京都守護職である会津藩主松平容保様の下で働く組織や。
仕事は主に京の治安維持に不逞浪士の取り締まり。ま、長州贔屓の町民からはごっつ嫌われてるわ」
……全然いい場所に思えないんだが。
そう思ったあたしがまた口を開こうとした時、山崎が言葉を続けた。