透明ニンゲンと秘密のレンアイ
第一章


 私は、見える。
 見えるはずのないものが――。



 昔、おばあちゃんにそう言われたことがある。


 まー、つっても、ユーレイなんて一度も見たことないけどね。

 だったら何で『見えるはずのないものが見える』なのか、意味分かんないけど。



 ――と、その長年の疑問が、高校1年生の春、 解明しました。



「な……っ!」


 私は目の前の光景に、持っていた体操着を落としてしまった。


「ん? どしたの若桜(ワカサ)」


 親友の胡桃(クルミ)が不思議そうにきいてくる。


 胡桃は容姿端麗でモテる。

茶色がかったフワフワの腰までのロングヘアーが、よく似合ってる。

 毎度の事ながら羨ましいと思いながら、私は答えた。


「いや……だってあれ……」


 私の視線の先には、学年1のイケメン、杉下直流(スギシタ スグル)が、女子更衣室を覗いている姿があった。

 入学早々話題になってたから、気になって胡桃と見に行ったから、顔は知ってる。

 鼻筋はシュッと通ってて、目は二重パッチリ。

 どちらかというと幼い印象を与えるイケメンだ。
 背は高め。

 背の低い私に分けて欲しい。

 胡桃は私の視線の先を見て、不思議そうに首を捻って言った。


「どうしたのよ。何もないよ」

「えっ?」


 もう一回確認してみる。

 うん、いる。

 てか、何かイケメンだからか、覗きをしてる姿もサマになってんだけど……。


 私はその事に若干微妙な感情を抱きながら言った。


「いやいや、いんじゃん。杉下君」

「えっ? 杉下君がいるの?」


 胡桃の目が輝く。


「う、うん。あそこで更衣室の中覗いてるし」

「はあっ? ちょ、若桜、それは杉下君に失礼じゃない?」


 胡桃はあからさまに不機嫌な顔をした。


「だ、だって……」

「はいはい。さっさと着替えるよー」

 胡桃は私の反論も聞かずに、更衣室に入っていってしまった。


「むぅ……」


 私は覗きをされてる部屋で着替えたくないので、とりあえず杉下君のもとへ言った。

 話しかけてみよう。



「あの……杉下君」

「ええっ!?」


 私が話しかけた瞬間、杉下君は驚いた。


「え……お前、オレが見えんの?」


 私は杉下君の質問に、当然とばかりに頷いた。

 すると杉下君はさらに驚いて言った。


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