透明ニンゲンと秘密のレンアイ
「むぅ……」
また手を繋いで、私達は走ってイルカショーの場所に向かった。
イルカショーの会場は走った甲斐あってか、まだちょっとしか席が埋まってなかった。
私達は迷わず一番前の席。
「楽しみだな~」
「うん」
「ここだと水被りそうだな」
「いいじゃんいいじゃん」
「そうだな。若桜ちゃんはオレが守るしな」
「な……っ!」
私達はそんな雑談をしながらショーが始まるのを待った。
約二分後、会場の席がほぼ満席の状態でショーが始まった。
「みなさーん! 今日は当水族館のイルカショーに来てくださってありがとうございます! では早速、イルカちゃん達の登場でーす!」
トレーナーのお姉さんがそう言うと、水の奥から2匹のイルカが出て来た。
「わあ、かわいい!」
私は歓声を上げた。
それからイルカ達は、お姉さんの指示通りに様々な芸をこなしていく。
そして次は、高い位置にある輪っかを通り抜ける指示が出た。
あ、濡れるかもっ!
私がそう思ったのもつかの間、大きくジャンプして、見事に輪っかを通ったイルカは、水面にダイブ。
大きな水柱がたった。
「きゃあっ!」
「うおっ!」
前から3番目位まで水は飛んで、一番前の私達はめっちゃ濡れた。
「わあぁ、濡れたぁ」
「ちょっとくせぇ」
ヘンタイが失礼な事を言っていたから、一発ど突いておいて、私達はその後もイルカショーを楽しんだ。
「あー、かわいかった」
イルカショーが終わって、私達は次はペンギンを見に行っていた。
「にしてもすごい濡れたね」
「だな」
「てか、アンタが守ってくれんじゃなか……」
私はそこまで言って、慌てて口を塞いだ。
ヘンタイは一瞬びっくりした顔をしてから
「へぇ~」
と、ニタァ~と笑った。
「な、何よその顔! キモチワルイ」
「なぁに照れてんの? もしかして、オレに守って欲しかったんだ?」
「違うし!」
「そうなんだ」
「違うってば!」
「まあまあ怒んなって。あれ冗談だしさ」
「え……ああ、なんだ……」
……。
あれ。
私、何で今ちょっと残念がったんだろ。
「……っ」
もう意味分かんない。
コイツも、私も。
「ああもう! 早く行こう!」