透明ニンゲンと秘密のレンアイ


 私はヘンタイの前に立って、ペンギンの方に向かっていった。


「なんか怒ってね?」


「怒ってないよ」


「……怒ってるように見えるけど」


「じゃあ怒ってるよ? アンタのしつこさにね!」


「えぇ……」



 ヘンタイが情けない顔で情けない声を漏らす。

 私はそんなヘンタイを横目で見てから



「まぁ……つまんなくもないけど」



 と呟いた。



「え……楽しい?」



 私がヘンタイの問いに、少々逡巡してから頷くと、ヘンタイはムカつく程にカッコイイ笑顔を浮かべて



「ははっ、ならよかった」



 と言った。


――ドキッ


 私の心臓が、馬鹿正直に跳ねて、私の体温が、馬鹿正直に上昇していった。



 なにこれ……。


 何でこんなヘンタイにときめいてんのよ私ぃっ!


 騙されるな……。

 コイツは透明になって、女子のお着替えシーンを堪能してたんだぞ……。

 その上女たらし!


 危ない危ない。


 危うく騙されるトコだったよ。



 でもよく考えると……


 コイツには結構ときめいてるかも。



 い、いや! それはコイツがイケメンだからであって……!


 間違っても、好きだからとかそんなんじゃない!


 ……ハズ。



「むぅ……」



 私が唸っていると、ヘンタイが



「どした?」



 と顔を覗き込んできた。


 また心臓が跳ねる。



「な……んもないっ」


「ふぅん? 何かよからぬコトでも想像してたんだ?」


「違うしっ! バカ!」



 私は再びヘンタイに背を向けて歩く。


 ヘンタイは苦笑しながら私の後を歩いてった。



 ペンギンを前に大興奮して、周りに迷惑をかけた私達は、次に深海魚のいる場所へ向かった。



「ペンギンかわいかったぁ~」



「だな。にしても若桜ちゃん、めっちゃ騒いでて、多分周りに迷惑だったよ」



「アンタもでしょ」



 呆れ顔で言うヘンタイを突っついて置いて、私はさっさと深海魚コーナーへ足を踏み入れた。



「うわぁ……」



 そこには、あまり見ることの出来ない深海の魚達が泳いでいた。


 深海魚コーナーなため、灯りはほとんど無かったけど、水槽に近づけば魚は見えた。



「すごいね……あれ?」





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