透明ニンゲンと秘密のレンアイ
私は詰め寄る流哉をどうにか宥めようと、必死に言葉を並べたけど、効果はなかった。
「なあ……俺はお前が好きだから言ってんだ……」
そう言いながら、流哉は服の上から私の胸を触った。
私はその一連の行動で悟っていた。
コイツ――体目当てだ。
私は自慢じゃないが、中2の時点で胸はCカップだった。
太る体質でもない。
コイツは体目当てだ。
私はその瞬間、流哉の頬を平手打ちしていた。
「やめて……っ! 触んないでよっ!」
「は……っ?」
流哉は頬を抑えながら、呆気にとられて私を見た。
周りは私の行動に、更にざわつきが増していた。
流哉はそれに気づき、恥ずかしさに顔を赤くすると、私を睨みつけた。
「お前なぁ……!」
流哉はそう言って、私をすごい勢いで突き飛ばした。
私は、後ろにあった噴水に勢いよく突っ込んだ。
高く水柱が上がる。
私は一瞬、何をされたか分からなかった。
そんな状態の私に構わず、流哉はこう言った。
「俺別にお前なんか興味本意で付き合っただけだかんな! 勝手に勘違いして、調子のってデートに誘ったお前が悪いんだぞ!」
ひとしきり叫ぶと、流哉は出口の奥に消えていった。
今度は私が呆気にとられる番だった。
「かわいそうに……」
どこからか、そんな呟きが聞こえた。
気づけば、みんなが私を見ていた。
全員、私にあわれみの視線を送って、口々に「かわいそう」と言っていたが、誰も噴水の中で一人呆然としている私を助けてはくれなかった。
私は自力で噴水から出て、びしょ濡れのまま、逃げるように遊園地を去った。