透明ニンゲンと秘密のレンアイ
私が全てを話し終えると、ヘンタイは怒りのこもった表情で一言。
「それからソイツとはどうなったんだ?」
声にも感じる怒りに、少しビビりながら私は答えた。
「学校ですれ違っても、お互い目も合わさなかったよ。自然消滅ってヤツ……かな。一言も話さなかった。けど……」
「けど?」
ヘンタイが先を促す。
私は俯いて答えた。
「さっき、深海魚の所で、会った。流哉と……」
「よーし、今すぐ深海魚コーナーへ急行だ。その下園流哉という名を借りたクズをボコしに行くぞ」
ヘンタイは勢いよくベンチから立ち上がって、指を鳴らしながらそう言った。
私のために怒ってるっぽいのは嬉しかった。
けど……
目がマジだった。
「ちょ、ちょっと待って」
私の危険感知アンテナが作動して、ヘンタイを止めた。
「何だよ」
ヘンタイが不満そうに私を見る。
私は必死に反対する材料を探しながら言った。
「もう別の場所行っちゃったかもだし、問題起こして、警察にお世話になるとかやだよ!? せっかくの……で、デートなんだし、今日は楽しもうよ!」
よく頑張った私!
最後のは多分、顔が赤くなってたかもしれないけど、よく言ったよ!
「……」
ヘンタイは納得したかな?
ヘンタイを見ると、何故か顔を赤くして、固まっていた。
……え?
なんで?
私も一緒にフリーズしてしまった。
数秒だけ見つめあったままフリーズしていた私達だが、それはヘンタイが喋る事によって終わった。
「そ、そうだな……。今日は大事なデートだもんな! デートは台無しにしたくないよな! 若桜ちゃんもデートを大切に……」
「わああぁぁ!! ちょ、ちょっと静かに!」
「デート」を繰り返しまくるヘンタイを、慌てて止める。
「恥ずかしいからやめて!」
「あぁ、わりぃわりぃ」
ヘンタイは我に帰って謝る事に安心しながら、私は深海魚コーナーの方を見た。