透明ニンゲンと秘密のレンアイ


 私が全てを話し終えると、ヘンタイは怒りのこもった表情で一言。



「それからソイツとはどうなったんだ?」



 声にも感じる怒りに、少しビビりながら私は答えた。



「学校ですれ違っても、お互い目も合わさなかったよ。自然消滅ってヤツ……かな。一言も話さなかった。けど……」



「けど?」



 ヘンタイが先を促す。


 私は俯いて答えた。



「さっき、深海魚の所で、会った。流哉と……」



「よーし、今すぐ深海魚コーナーへ急行だ。その下園流哉という名を借りたクズをボコしに行くぞ」



 ヘンタイは勢いよくベンチから立ち上がって、指を鳴らしながらそう言った。



 私のために怒ってるっぽいのは嬉しかった。


 けど……




 目がマジだった。




「ちょ、ちょっと待って」



 私の危険感知アンテナが作動して、ヘンタイを止めた。



「何だよ」



 ヘンタイが不満そうに私を見る。


 私は必死に反対する材料を探しながら言った。



「もう別の場所行っちゃったかもだし、問題起こして、警察にお世話になるとかやだよ!? せっかくの……で、デートなんだし、今日は楽しもうよ!」



 よく頑張った私!


 最後のは多分、顔が赤くなってたかもしれないけど、よく言ったよ!



「……」



 ヘンタイは納得したかな?



 ヘンタイを見ると、何故か顔を赤くして、固まっていた。




 ……え?



 なんで?




 私も一緒にフリーズしてしまった。



 数秒だけ見つめあったままフリーズしていた私達だが、それはヘンタイが喋る事によって終わった。



「そ、そうだな……。今日は大事なデートだもんな! デートは台無しにしたくないよな! 若桜ちゃんもデートを大切に……」



「わああぁぁ!! ちょ、ちょっと静かに!」



 「デート」を繰り返しまくるヘンタイを、慌てて止める。



「恥ずかしいからやめて!」



「あぁ、わりぃわりぃ」



 ヘンタイは我に帰って謝る事に安心しながら、私は深海魚コーナーの方を見た。



< 18 / 45 >

この作品をシェア

pagetop