透明ニンゲンと秘密のレンアイ



 一瞬、何か金色のものが見えたのは気のせいだろうか……。



 嫌な予感……。



「おいおい若桜、何で逃げたんだよ~」



 追っかけて来やがったな。流哉め。


 コイツもヘンタイに負けないしつこさだな。



「……コイツか?」



 ヘンタイが私に小声で訊いてくる。


 私が頷くと、ヘンタイは鋭い目つきで流哉を睨みつけた。



「あ? 何お前」



 流哉も負けじと睨み返す。



「オレは若桜ちゃんの……彼氏だよ」


「……っ!」



 ヘンタイの予想だにしなかった言葉に、私は息が詰まった。



「な、な……」



 私が口をパクパクしていると、流哉は私をにやけ顔で見て言った。



「へぇ~。なに、若桜また体目当ての男に捕まったの?」



 「また」――。


 それは、流哉が私と体目当てで付き合ったと言ってるのと、同じ事だ。


 なんか……傷ついた。


 私が黙り込んでいると、すかさずヘンタイが私の肩を掴んで抱き寄せた。



「わりぃけど、オレはお前みたいなクズとは違って、ちゃんと若桜ちゃんが好きだから付き合ってるから」


「な……っ!」



 嘘だと分かってても、やっぱり「好き」って言われると心臓がその鼓動を早めてしまう。


 クズ呼ばわりされた流哉は今にも殴りかかりそうな勢いでまくし立てた。



「普通はこんな平凡極まりない、面白くもない女なんて、体目当てでしか付き合わねぇよ!」


「あ?」



 私が流哉を睨みつけると、流哉の現彼女らしきあの女が流哉の後ろから出てきて、至って冷めた様子で言った。



「あのさ、りゅうくん。元カレなんていいじゃん。私はりゅうくんと二人きりでいたいんだけ……」



 女の言葉は、あるものを見た瞬間止まった。



「あれ……直流?」



「ん、ユリじゃん」



 あるものとは――直流、つまりヘンタイだった。



「「え?」」



 私と流哉が同時に声を上げる。


 ヘンタイはびっくりした顔をしていたが、すぐにニヤァ~っと笑みを浮かべると、困惑している流哉に言い放った。



「ユリ、オレのセフレなんだよね~」


「……は?」



 私は、いきなりの展開に頭がついていかなった。


 セフレ? マジで?



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