透明ニンゲンと秘密のレンアイ
私はますます混乱していて、状況を理解した流哉が怒りと失望に顔を歪めていると、ヘンタイは流哉に追い討ちをかけた。
「オレ、もうコイツと何回ヤッたかなぁ? 少なくともお前よりはユリのあれこれを知ってるよなぁ」
「な……な……ユリちゃん、本当?」
「あー……うん。本当」
ユリちゃんとやらがあっさり頷くと、流哉は悲しそうな顔をしてユリちゃんに詰め寄った。
「何でだよ! 俺じゃ満足出来ないってか!?」
「あー……ま、そういう事かな」
またもやユリちゃんがあっさり頷くと、流哉は今にも泣きそうな顔をして、その場からダッシュで逃げて行った。
「あっ、ちょっとりゅうくん!」
ユリちゃんがその後を追いかけようとした時、ヘンタイがユリちゃんを呼び止めて言った。
「ユリ、今コイツが本気で好きだから、しばらくヤれねえや」
「ああ、分かったわ」
ユリちゃんは頷くと、今度こそ後を追った。
それはよかった。
けど!
「ちょっと杉下君! アンタってやっぱチャラ男だったんだね! てか……私彼女なんかじゃないし……! す、好きなんて……意味分かんないし!」
今になってやっと思考が整理出来た私は、ヘンタイに詰め寄っていた。
こんなこと言うの、めっちゃ恥ずかしいけど、聞き捨てならなかったんだもん!
ヘンタイは、不意に私の耳元に顔を近づけると
「だって、オレがお前を守りたいから」
な、な、な……!
私が黙り込んで、顔を真っ赤にしていると、ヘンタイはクスッと笑って
「可愛いな」
と言った。
「可愛くない! バカ!」
「へいへい」
ヘンタイめ。軽く流しやがって!
ああもう! 本当に恥ずかしいし……!
……てか、心臓うるさいし。
何でこんなドキドキしてんのよ私ぃ!
チラリとヘンタイの横顔を見る。
ヘンタイが私の視線に気がついて、優しく笑って「ん?」と言った。
――ドキッ
私は慌ててそっぽを向いた。
ああもう! 心臓うるさい!