透明ニンゲンと秘密のレンアイ
幼女もどきはちょっと考えてから
「何でもいいよ」
と言った。
気を遣った故の言葉なのかもしれないが、何気に一番困る答えなんだよなぁ……。
「あー……やっぱりたこ焼き!」
オレが迷っていると、幼女もどきは元気な声で、無邪気な笑顔で言った。
あー……可愛い。
オレ、もしかしてコイツが好きなのか?
いや、それはないか。
女の子を可愛いと思った事なんて、たくさんあるし。
恋愛的なモンじゃあないだろう。
「ははっ、若桜ちゃんたこ焼き好きだよな」
「うん!」
「じゃあ食うかー」
オレ達は水族館を後にして、ちょうど近くでたこ焼きを売ってる屋台に向かった。
「水族館、ちょっと名残惜しいねー」
不意に幼女もどきが、水族館を振り返って寂しそうに言った。
名残惜しいって事は結構楽しかったのかな?
それなら……嬉しい。
しかしオレは内心の気持ちを言わず、ちょっとアイツの事について毒づいてみた。
「確かになー。若桜ちゃんの元カレ騒動のせいで、充分楽しめなかったよな。まったく、大事なデートをさぁ」
「ふえっ!? べ、別に大事なデートじゃないでしょ!」
「えぇ~? 大事なデートでしょ? だって若桜ちゃん、名残惜しくなるくらい楽しんでたんだしさぁ」
「あっ、あれ嘘! ふっ、雰囲気的に言ってみただてだしっ!」
「若桜ちゃん噛んだ~」
「う、うるさいな!」
幼女もどきは顔を真っ赤にしてオレを睨む。
やべー可愛い。
んなことして、無事でいられると思ってんのかコイツは。
これは一回叱らなければ。オレのためにも。
「あのさぁ若桜ちゃん」
「な、なに……?」
オレの真剣な顔に、幼女もどきはちょっと警戒した様子で一歩引いた。
だからオレは一歩幼女もどきに近づいて、言葉を続けた。
「オレ、透明になれる力、結構自由に使えんだよね」
「へ? それがどうしたのよ……」
「例えば、オレが透明になるだけじゃなくて、オレが触れてる物や人も透明に出来んの。それも自由自在に」
「だから、それが何よ」
「若桜ちゃん、ホント天然だね」
オレは若干呆れながら、軽く幼女もどきの腕に触れる。