透明ニンゲンと秘密のレンアイ
「ああー、疲れた」
本当に疲れた。
色んなことがありすぎた。
こんな濃厚なデートなんて、きっともう体験しないだろう。
貴重なデートだった……んだろうけど……。
ヘンタイに振り回されてばっかだった気がするんだけど。
でもまぁ……結構楽しかったけど。
翌日、私は朝の教室で、教室のドアを開けた瞬間に、何故か女子に囲まれた。
「若桜、杉下君と付き合ってるの!?」
「一緒にたこ焼き食べてたって本当!?」
「いつから付き合ってたの!?」
え、何これ。
てかまず鞄置かして下さい。
私が困惑して突っ立っていると、一緒に登校していた胡桃が私に耳打ちしてきた。
「そう言えば、今まで忘れてたんだけど、昨日の下校中に若桜と杉下君が、一緒にたこ焼き食べてたって噂していた人達がいたわね……。その事なんじゃない?」
マジかああああ!
まさかの見られていましたか!
うわあああ面倒くさいことになったぁぁ!
どうしよう……。どう言い訳しようかな……。
私が焦っていると、胡桃が更に耳打ちしてきた。
「正直、私もちょっと真相が知りたいかも」
胡桃まで!
どうしようどうしよう。
最悪だ。
私の頭の中は、もうパニック状態だった。
その時
「何の騒ぎ?」
後ろから聞き慣れた声が聞こえてきて、女子達が黄色い声を上げた。
「杉下君……」
たった今登校してきたらしいヘンタイが、そこにいた。
ヘンタイと一緒に登校してきたらしい友達は、後ろで成り行きを見守っている。
「す、杉下君、昨日若桜と一緒にたこ焼き食べてたって……付き合ってるの!?」
私を囲んでいた女子の一人が、単刀直入にヘンタイに訊く。
女子達がさっきとは打って変わって、静かにヘンタイの答えを待つ中、ヘンタイは周りを見渡して、最後に私を見た後、こう答えた。
「付き合ってねぇよ」
「ほ、本当に?」
「ああ。人違いじゃね? オレこの子の事、よく知らねェし」
あ――……。
分かってる。きっとヘンタイは騒ぎになりたくないから、そう言ったんだって分かってる。
「ああ、なぁんだ。よかったー」
「そうなの若桜?」