透明ニンゲンと秘密のレンアイ

 胡桃が私の顔の前で手を振った。


 私が涙目で胡桃を見ると、胡桃は若干呆れたように笑って言った。



「また勉強会でもする?」


「するっ! 数学教えて下さいぃ!」



 私は目をキラキラさせながら言ったのだった――。




 これで赤点は免れた!

 と調子に乗っている私に制裁を加えたのは、ヘンタイだった。


 放課後、胡桃が委員会の集まりがあるため、先に帰ろうとして、愕然とした。



「ウソぉ・・・・・・。雨じゃん」



 呆然と立ち尽くす私に、傘を借そうとしてくれる優しい友達は何人かいたが、返すのも面倒なので、濡れて帰ろうとしたその時



「おい」



 後ろから、ヘンタイの声が聞こえてきた。


 私は玩具みたいにゆっくりと振り返る。



「何だその振り返り方」


「うっ……」



 そこには、案の定ヘンタイが呆れ顔で立っていた。



「ま、いいや。傘ないの?」


「……うん」


「ふーん」



 ヘンタイは外に出て自分の黒い傘をバッと広げると、私の方を振り返った。


 そこには、嫌らしい笑みが張り付いていた。



「相合い傘、するか?」



 はいいっ!?



「バ、バッカじゃないの! 相合い傘なんて……!」


「んじゃあ若桜ちゃんどやって帰んだよ」


「べ、別に濡れても構わないし!」

「ダーメ。入れ。ほっとけるかよ」



 それは……私が女の子だから?


 私が女の子だからほっとけないのかな?


 私だから……とかだったら嬉し……


 って何考えてんのよ私ぃ!


 私ってこんな夢見がちメルヘンガールだったっけ!?
 落ち着け私!


 あぁもう、どうしよう。


 コイツと相合い傘しようかな。しないかな。



 ヘンタイは真剣な目でじっと私を見ている。


 そ、そんなに見つめられると困るんですが……。
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