透明ニンゲンと秘密のレンアイ
ダボダボTシャツは必須アイテム
オレは今、幼女もどきを半ば強引に家に連れて行っている。
・・・・・・いや、見ようによってはさらってるだけだよなこれ。
そんな事を考えていると、一際強く向かい風が吹いた。
走っていた事もあって、オレの安っちい傘はひっくり返って壊れてしまった。
「あっ、傘が・・・・・・」
幼女もどきが心配したようにオレが持っている傘を見る。
「あー、大丈夫大丈夫」
オレは幼女もどきを安心させるように笑い、傘を脇に抱えた。
にしても、雨が強いなぁ。
オレにも、そして幼女もどきにも冷たい雨が吹き付けている。
さっさと帰ろう。
オレは幼女もどきの前に立って、幼女もどきにかかる雨の量を抑えながら、手を引いて家へと走った。
「若桜ちゃん、着いたよ!」
「あっ、うんっ!」
数分でオレの家に着き、鍵を開けて玄関のドアを開け、若桜ちゃんを先に家に入れる。
広くもない、靴箱と靴箱の上に花瓶に生けた花と、絵が飾ってあるだけの玄関を、幼女もどきは落ち着きなくキョロキョロ見ている。
とりあえず、ビショビショのまま家に上がる訳にはいかないし・・・・・・。
「姉ちゃーん」
オレは二階にいるであろう四歳上で大学一年生の姉・春乃(ハルノ)を呼んだ。
四月の早生まれだからもう十九歳だ。そして春生まれだから春乃。
親よ。名付けが安直すぎないか?
「はーいー?」
二階から一階への階段を下りる音と共に、安直に名前をつけられた姉ちゃんが気の抜けた返事をした。
「アンタが玄関で私を呼ぶなんて珍しいわね。って、あ?」
姉ちゃんは玄関にいる幼女もどきを見た瞬間、固まった。
「ちょっとヤダ直流ってば誰その子!? アンタが女の子連れてくるなんて初めてじゃない!?」
・・・・・・まあ確かにそうだけど、姉よ、驚き過ぎ。
オレは今まで色んな女の子と付き合ってきた。遊んできた。でも大体いつも遊ぶのは外かラブホか女の子の家くらいで、自分の家に女の子を連れてきた事は、実はこれでたったの二回目だったりする。