透明ニンゲンと秘密のレンアイ
今、このTシャツからヘンタイに匂いがした。甘いけど、落ち着くような独特な香り。
もしかしてこれ、ヘンタイのTシャツ・・・・・・?
「・・・・・・っ」
途端に体温が上昇して顔が熱くなる。
だから男物なのか。今まで気づかなかった私は鈍感過ぎる。
しょうがないから、ヘンタイのTシャツってことは意識しないで着ることにした。
予想通りブカブカで、本来なら肘あたりまでの袖は、私が着ると肘をすっぽり覆うくらいの長さだった。
丈はギリギリパンツが隠れるくらい。少しでもおじぎをしたらパンツが見えちゃうと思う。
丸い襟元はもともと少し広いデザインな上に、ヘンタイの扱いが乱暴なのか、結構緩くなっていた。
胸元開きすぎだから。谷間見えそうなんだけど。
幸いなのは、Tシャツが黒いって事。白かったら下着透けちゃってたもんね・・・・・・。
意を決して洗面所を出る。
春乃さんを捜す・・・・・・必要はなかった。
リビングらしき部屋からニヤニヤ顔の春乃さんが廊下に出てきたからだ。
「あの、春乃さんっ」
「若桜ちゃん、どうですかー? 彼氏のTシャツは」
「春乃さんっ、困りますよ。こんな破廉恥なカッコじゃダメですって」
必死に訴えるけど、春乃さんはニヤニヤしたまま軽く私をあしらう。
「大丈夫大丈夫。にしても若桜ちゃんってなんかいじめたくなっちゃう感じだね」
え。あの、そんなとびっきりの笑顔で言わないでください・・・・・・。
確信。
ヘンタイと春乃さんはドSな部分が一緒だった。