透明ニンゲンと秘密のレンアイ


 胡桃の部活見学の誘いを断って、私はヘンタイのクラスへ向かった。


 何人か出入りしているから、きっともうHRは終わってるよね。


 私はヘンタイのクラスの教室を覗いて、ヘンタイの姿を探す・・・・・・必要は無かった。


 ヘンタイは、たくさんの女子達に囲まれて、笑っていた。


 忘れてた。


 ヘンタイは、モテるんだった。



 私は静かに教室を後にした。


 何よアレ。


 私との約束より、女の子が大事ですか。


 別に私は、ヘンタイの彼女でも何でも無い。分かってるけど、何かムカつく。


 裏切られた気分。


 校門を抜けて、私は叫んだ。



「もぉ~いい!」



 絶対バラしてやる!


 その時、後ろから誰かの声がした。私を呼ぶ声。


 いや、誰だか分かる。


 振り向くと、ヘンタイが立っていた。


「置いてくなよな。たこ焼きおごる約束だったろ」

「・・・・・・」

「若桜ちゃん?」

 ヘンタイが私の顔を覗き込む。
 私はバッと離れると、怒鳴った。

「もぉうるさいなぁ! どうせ私との約束忘れて、女の子とイチャイチャしてたんでしょ! 見てたんだから! ヘラヘラしちゃって・・・・・・バッカみたい」

「え・・・・・・」

 ヘンタイは一瞬驚いてたけど、すぐにバツが悪そうに笑って言った。

「ああ、ごめん。あれは部活見学に一緒にまわろうって女の子に誘われまくっててさ。断るのに時間かかったんだよ。バッサリ切り捨てるのもかわいそうだし」


 ――なんだ。

 そんなコト。
 てっきり約束すっぽかして、女の子に手ぇ出してたと思ってたのに・・・・・・。


「そ、そうなんだ。あ・・・・・・ごめんね。勝手に決めつけて」
「ん、いいよ」

 ヘンタイが優しく笑う。

 不覚にも、ちょっとドキッとしてしまった。


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