透明ニンゲンと秘密のレンアイ

ファーストキス


 たこ焼きを食いながら、不意にヘンタイがこんな事を言い出した。


「なぁ、お互いの事を知り合うには、デートが一番だよな!」

「はぁ!?」


 ちょっと待ったぁ!


「デ、デート!? ななな何で!?」

「何でって……一緒に出かけりゃあ、大体お互いの事が分かるだろ?」

「そうだけど、そんな極端な……」


 私がモゴモゴ反論していると、ヘンタイは悪戯っぽく笑って言った。


「いいじゃんいいじゃん。オレ、若桜ちゃんとデートしたいしさ」

「……っ!」


 しれっとそういう事言いやがって……!


 不覚にも、ちょっとドキッとしちゃったよ。


「わ、分かったよ。じゃあ、デートで……」


 恥ずかしくて、つい語尾が小さくなってしまった。


「あれぇ? 若桜ちゃん照れてんの? あ、もしかしてデートした事ないの?」


 ヘンタイが私をからかう。

 それも楽しそうに……。


「なっ、あるわよそんくらい!」


 悔しくてついそう言ってしまった。

 まあ、嘘じゃないし。

 なのに、私がそう言った瞬間、ヘンタイは面白く無さそうに「ふぅん」と言った。


 悪かったね!

 私は勢い良くたこ焼きを口に突っ込んだ。

 うん、美味しい!


「彼氏いんの?」


 ヘンタイが私に訊く。


「今はいないよ」

「じゃあ良かった」


 ヘンタイが破顔する。

 むぅ……カッコイイ……。


 てか、「良かった」って何さ。

 私に彼氏いるならデートは悪いとでも?

 彼氏いたら、アンタとのデートなんて許可する訳ないじゃん。


「んじゃあ、日曜日の十時半に駅前に集合な」


 たこ焼きを食い尽くし、そう言い残して、ヘンタイは去って行った。


 デートなんて……あんまいい思い出ないけど。

 あのヘンタイとなら、なんか、なんとなく。


 楽しめそうな気がする。





 デート当日。


 私は約束の時間五分前に待ち合わせ場所に着いた。


 ヘンタイは……。


 周りを見回す。


 まだ来てないみたい。


 私は自分の服装を整えた。

 今日の服は、胸元が少し開いた、白のワンピース。

 腰には茶色のベルトで、スカート部分をちょっと上に上げている。
 袖は七分丈。

 靴は茶色のショートブーツ。ヒールは低め。


 髪型はサイドハーフアップ。シュシュで括り付けている。


 ……って!


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