透明ニンゲンと秘密のレンアイ

　何バッチリキメてきてんの私ぃ！


　うう……。

　デートってワードに騙されて、ついオシャレをしてきてしまった。


　これじゃあ私がヘンタイと会うから、キメてきたみたくなるじゃんか。


　服装は無理でも、せめて髪型だけでもいつものに戻そうかな。


　私がそう思った時



「おお！　若桜ちゃん可愛いじゃん」


　ヘンタイが待ち合わせ場所にやって来た。

　服装はGパンにパーカー。

　でもイケメンだし、スタイルいいから逆にラフな格好のが似合うのかな。


　ていうか可愛いって……

　またしれっと言いやがって。


　可愛いなんて男子に言われ慣れてないから、少したじろいでしまった。


「あ、ありがと……」


　お世辞だろうけど、一応お礼はしとかないとね。


　でもやっぱり恥ずかしくて、俯いてヘンタイを見ながら言った。


「お前……それわざとやってんの？」


　私がお礼を言うと、ヘンタイは私から顔を背けてそう訊いてきた。


　わざと？

　どういう事だろ。


　不思議に思い、私は首を傾げた。


「……バカだろ……」


　ヘンタイはそう呟いて、私から体の向きごと背けた。


「はっ？　バカってヒドくない!？」


　私は思わず抗議する。

　もう意味分かんないよ。


「ごめん。まあ、お前が悪いんだけどな」


　ヘンタイはそう言って私の手を取り、駅のホーム向かって歩き始めた。


「はっ？　ちょ、手……！」


　私は抗議する事よりも、手を繋がれた事の方が気になった。


「ん？　いいじゃん。手ぇ繋ぐくらい」


　そう言って、ヘンタイは手を繋ぐのを恋人繋ぎに変えた。


　絶対わざとだ……！


　私は顔を真っ赤にしながら、ヘンタイを睨んだ。


「あのさ……」


　ヘンタイは不意に私の耳に顔を近づけ


「その表情、誘ってるようにしか見えないんだけど」


　と囁いた。


――ドクンッ


　心臓の鼓動が早まる。


「誘ってない……！」


　私はヘンタイの体を引き剥がしながら、必死に否定した。

　しかし引き剥がした手を掴まれて、一目につかない場所に連れ込まれた。


「な、なに……」


　私は驚きながらも、何とかヘンタイを睨んだ。


「あんまり誘うと、襲っちゃうよ？」


　再び耳元で囁かれる。


　体温が一気に上昇する。


「いっ、意味分かんないし……！」