キミのための声







―――『それでどうしたいの』





今さっき言われた言葉が
そのまま頭の中で繰り返される。




どうしたいのって




それは……





「…好き、だから…
だから、そのっ……」





『付き合ってください』





その言葉がなかなか出ない。




だって




フラれるの分かってて……






―――『このままウジウジしてても
どうにもならないんだから、
フラれようがなんだろうが
告白してきなよ!
告白しちゃいけないなんて
ないんだし、早くしないと
他の女子に取られるよ!?』





ふと、
由香の言葉を思い出す。





……そっか




そうだよね。






「…もしっ、もしよかったら……」





好きって伝えて終わり、
なんて都合よすぎる。




だって





あたしはほんとは、
それだけじゃなくて―――……









「―――付き合って下さい!」









15年間生きてて





こんなにドキドキしたのは
初めてだった。





自分から好きって言ったことも




告白したことも




初めてだったんだ。





……緊張し過ぎて、
足震えてきちゃった。




ぎゅっとスカートを握って
葵くんの返事を待つ。




せめて友達で
居てくれるかな……?














「―――いいよ」












頭上から降ってきた、
よく響く声。





「………へ?」





素っ頓狂な声を出して
顔をあげたあたしは、きっと
相当アホ面だったと思う。





「え…今、なんて……」





葵くんは相変わらず無表情のまま、
サラサラな髪を風に靡かせる。






「いいよって言ってんの」






聞き間違いじゃ、なかった。





『いいよ』って






それはつまり……







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