キミのための声
長い階段を駆け上がり、
右に曲がってすぐの教室。
ドアの前で荒い呼吸を
少し整えてから、
ガラッとドアを開ける。
開けてすぐに見つけた、
数人の友達に囲まれて
窓に寄りかかる彼の姿。
「葵くんっ!」
あたしの声に彼は、
話していた友達に何か一言残し、
こちらへ歩いてくる。
縮まる距離に、あたしの体温は
すでにヒートアップ。
彼は目の前に立つと
あたしを見下ろし、
「……屋上」
低い声で一言。
「うんっ!」
180前の身長の彼を見上げて
笑顔で頷き、黙って
彼について歩き出す。
「今日はね、可愛いよっ!」
「……何が」
「お弁当!いつもより早く
起きたから、ちょっと
頑張っちゃった!」
「…それはどーも」
馬鹿みたいにニコニコして
彼を見上げて話す
あたしに対して、
表情ひとつ変えずに
ただ前を見ながら返す彼。
こんなのもう、慣れたけどねっ!