キミのための声
「ま、頑張れよっ。」と言って
ポンと背中を叩かれ、
あたしは少し笑って頷く。
「元気ない愛梨沙とか、きもーい。」
イイ感じの友情シーンを
ぶち壊しにしたのは、
由香の一言。
ポッキーを口に運びながら、
冷めた目であたしを見る。
「ちょっ、きもいって何!!」
「常に元気すぎて
ドジするのが愛梨沙でしょー?
シュンとするのやめてよー」
はぁ、と溜め息をつく由香に
「一言余計だよっ!」
と顔を背けた。
「まぁ確かになかりさは、
いつも『葵くーんっ♪』って
馬鹿みたいに追い掛けてんのが
なかりさらしいよなぁ」
と真面目な顔して頷く陽に、
「だからみんな
一言余計だってばー!」
思わず泣きそうになるのを
抑えて抗議する。
「あはは、冗談冗談。
とにかくね、そんなに悩むの
らしくないってことよ」
そう言って由香は、
子供にするように
あたしの頭を撫でる。
「らしくないって言われても…
悩むものは悩んじゃうよ……」
葵くんが
あと少しだけ
あたしを彼女として
見てくれたら
こんなに悩まないのに……。
「まぁとりあえずさ、
お弁当忘れたんでしょ?
なら一応忘れちゃったって
言いに行きなよ。」
由香の言葉に顔をあげて、
大きく頷く。
「そうだよね!由香すごい!
そしたら少しでも話せる!」
そう言って目を輝かせる
あたしを見て、3人共笑った。
そして昼休み。
あたしはいつものように走って
6組へ向かう。
なんて言われるかな……
―――『ごめん葵くんっ!
あたしドジだから、
今日寝坊しちゃって…
お弁当作れなかったの…』
『え?そうなの?
なんだ、残念だな…
今日も愛梨沙の美味しくて
愛のこもったお弁当が
食べれると思ったのに……』
『あぁ、ほんとにほんとに
ごめんねっ…!明日は絶対に
作ってくるからっ!
今度はクマさんご飯で!』
『分かった、楽しみにしてる。
……だけど今日はやっぱり
ショックだから、代わりにくれる?』
『え、何を?あたし今
なんにも持ってない…』
『うん、いいよ。俺は
愛梨沙の唇が欲しいんだ……』
『…えっ?…あ、ちょっと葵くん、
こんなトコでっ…あ―――……』