キミのための声
「まぁまぁ、そんな
怖い顔すんなって」
彼の言葉で初めて
彼を睨んでいたことに気付く。
パッと視線を逸らして
横を通り過ぎようとすると、
「―――滝澤 葵」
囁くような彼の声に
思わず足を止めてしまう。
振り向かずにいると、
彼が一歩一歩こちらに向かってくる。
「アイツのことなら
何でも知ってるよ、俺」
腰を屈め、あたしの顔を
覗き込んでニヤリと笑う。
今度はちゃんと自覚をもって、
思いっ切り睨んでやる。
「だから何なの?
あたしには関係ない」
「そんなに目に涙溜めて…
可哀想だね、アンタ。
あんな奴のために泣くなんて」
人を蔑むような瞳で、
演技をしているみたいに。
あたしの中には、
確実に怒りが芽生えていた。
「なんなの…構わないでよ」
「構いたくなっちゃうね。
だってあんな奴を必死で
好きでいようとしてて、
ほんと見てらんないし」
「……葵くんの何を知ってるの…」
何を知ってて
そんなに分かりきったような
ことが言えるの。
彼はニコッと笑って、
「俺、葵の従兄弟。」