キミのための声
あたしの目が見開く。
驚きの顔で彼を見上げる
あたしを見て
愉快そうに微笑み、
「ほんとだよ。
アイツに聞いてみなよ」
「……イトコ…?」
「そ。血繋がってんだよ」
「………だから、そんなに…」
「『そんなに似てるんだ』って?」
全てを見透かしたような目。
この人、何を知ってるの…?
「…だけど従兄弟って、
そんなに似るものなの…?」
目つきも
鼻筋も
口元も
体型も
そっくりなんだ。
「ん?あぁ、俺ら親同士が
双子なんだよねー。
んでどっちも母親似で
こんな似ちゃったの。」
「……そう、なんだ」
「愛梨沙ちゃんの
タイプでしょ?俺の顔。」
「……は?」
「葵とそっくりだし」
「……だからって」
こんな、チャラチャラした人
タイプなんかじゃない。
「ま、いーけど。」
「……もういい?急いでるの」
返事を聞く前に行こうとする
あたしの手を彼は緩く掴んで、
「だめ。これからだよ」
「…は?」
「アンタさ、欲求不満だろ」
「何言ってるの……?」
意味が分からない。
その、何もかも
見透かしたような目
やめてよ……
手を振り払おうと力を込めるが、
先に彼の手に力が入る。
「一緒に帰ってももらえない、
まともに話してもくれない、
名前も呼んでくれない、
笑ってもくれない。
普通のカップルがしてる
ようなこと何1つ出来ない。」
―――分かってる
分かってるから
言わないでよ。
「なぁ…アンタほんとに
このままでいいの…?
なんのためにアイツと
付き合ってんだよ?」
「…関係ない……」
そう言って俯きかかった時、
不意に髪を掬われ
それを口元に持っていく。
「ねぇ……。
アイツにそっくりな俺で、
欲求解消してみない……?」