キミのための声





彼の名は





滝澤 葵(たきざわ あおい)




15才





明るめの茶髪は



いつもサラサラで



切れ長の目は



いつも魅力的で



スッと通った鼻筋も



形がよくて薄い唇も



180近い身長も



長い手足も




全てがかっこよくて。




よく響く低い声が大好きで



常に冷めた表情だって



彼の魅力で





葵くんの全部が




大好きなんだ。






「…ごちそーさま。」




そう言って綺麗に食べ終えた
お弁当箱を元に戻して、
スッと立ち上がる。



「え、もう行くのっ?」



「あー…なんか怠いから寝る」



「ここで寝ればいいのに!」



まだ行かないでよっ。



という視線を向けるけど、
やっぱり彼はそれを流して。




襟足を指先で整えながら、



「ここ寝心地悪いし」



そう言って、スタスタと
出口へ向かっていく。




あたしはつい
勢いよく立ち上って、



「あっ、明日も作ってくるねっ!」




…いいって、言われた
ばかりだけど。



葵くんはピタッと立ち止まり、
顔だけをこちらに向かせる。




笑顔で「うん」って
言ってくれないのなんて、
分かってるんだけどさ



ちょっと期待しちゃうんだよね。




しかし彼は
期待を打ち破るどころか、
尖った針に変えて返してくる。




フー、と小さく溜め息が
聞こえたかと思うと、
わずかに頷いてすぐに
出て行ってしまった。







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