コイビト未満



「今回、あんま話してないよねー」

「ん?」

「葵のこと」



シャワーを浴びて
二人利根の部屋のベランダで缶ビールを開ける


まだ少し肌寒い夜風に吹かれながら




「まー確かに…
会えなくてもわざわざ連絡して来てたもんな、いつもなら」

「うん…」




数秒の沈黙が続く



でもこれは、嫌な沈黙ではなくて


私たちのちょうどいい距離感





沈黙を破ったのは

利根の方だった



「お前さ、いつも本当に大事なことは最後まで自分から口割らないからな」

「え…?」

「高津の時だってそうだったしな
結局あんななるまで黙りやがって…

だから今回も特に連絡してこなかったって事はそれだけ真剣に向き合ってるって勝手に解釈してる」




利根はいつも

いつもいつも私のことをちゃんと見てくれている


いつもいつも、こんな私を見捨てないでいてくれる





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