コイビト未満
少しの沈黙を破ったのは、桐矢くん
館内には人気は殆どない
このフロアに居るのは、私と彼だけ
「うん…なに?」
「いやー特にこれって言う訳じゃないんだけど…最近どうなの?」
「どうって?」
「分かってるくせに。葵だよ
ちゃんと向き合ってんの?あいつと」
桐矢くんの冷たい目
その瞳は
私の嘘を抱いた心を突き刺すような鋭さで
目を合わすことが出来ない
怖い、すごく怖い
「………忙しくてなかなか会えなくて」
「ふーん。連絡は?忙しくてもそれくらい返せるだろ?
あいつ笑いながら言ってたわ。また先生にスルーされてるって」