コイビト未満


「もう!決めたからやるの!
葵も黙ってバイトしてなさいよ!」



そう言って冷たく突き放す


少しくらい冷たくしないと、この子にはわからない



でも…




「じゃあ菜成…約束してくれる?」

「何?」

「絶対他の男のとこ行くなよ?絶対、俺のとこ、すぐ戻ってきて」




子猫のような甘えた顔をするのに


その瞳はすごく寂しそうで




親の帰りをずっとまっている子供みたい





束縛は嫌い、

誰かに何かを決めつけられるのも嫌




私は私のペースで生きたい




けど葵に振り回され始めてから




葵の我儘までもが愛しくなって




全部受け入れてしまう






私は、葵のことちゃんとしてあげられないから

今、凄く不確かで中途半端な関係だから



だから不安なんだよね?


私がすぐに何処かに行っても、責める権利がないような関係だから




だからそんな哀しい顔してるんだよね?






「…ごめんね」

「え?」



< 173 / 433 >

この作品をシェア

pagetop