コイビト未満


鮮やかに開いた花は


時間を置いて音を立てる




その、一つ一つに歓声が沸いて





その群れを掻き分けるように人混みの中を流れに逆らいながら進む





あぁ、もうなんで日本人はこうも、イベント事となると普段は然程興味もないものに雰囲気に飲まれて盛り上がりたがるのか


何故かなのか。


なーんて無駄な苛つきを覚えながら人混みの中を進む



また一つ大きな花火が打ち上がり

拍手が舞う中



その人混みを抜けた後

何か視界に違和感を抱いた






「……………葵」






見たことのある、背丈、髪色、制服の着崩し方

別にいい、いいんだけれど


葵と花火の約束なんてしてないし
行こうが行かまいが構わない


構わないんだけど


だけど






葵の隣にいるのは、沖田さん




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