コイビト未満


「あっつー!
焼け死ぬなこれは!」

「やっばいね、さすが沖縄の夏!
日焼け止め足りるかなあ」





午前11時の飛行機に乗り

昼過ぎには沖縄に着いた



天気は雲ひとつない、快晴



最高の旅行日和



空港を出た瞬間のモワッとした熱気



来る度に感じるこの蒸し暑さが大好き



息苦しい夏なんて、大嫌いなのに




ここは特別



「ほい、菜成、荷物」

「えっいいよ、葵の荷物もあるんだから
自分で持つ」



私の荷物を軽々と持つ

2泊3日なのに、詰め込みすぎちゃった…


そんな重い荷物をサラッと持ってしまう葵



「バカ。俺男の子だし。たまには甘えてくれませんか?やだ?」




顔を覗き込むように問いかける



葵の綺麗な顔が私に近づく




「いや…じゃない」

「ん。じゃ行こっか
タクシーどっち?」




年下のくせに、そうやって

どこで覚えたのかそんな術


そんな優しくされたら
嬉しいじゃん


ドキドキするじゃん





「ねえ、葵っ…」



タクシー乗り場へ向かう葵の服を掴んだ





「あり…がと」


「なんで照れてんの
どういたしまして、ほら行きますよ菜成さん」




片手で軽々と二人分の荷物を持ち


もう片方で私の手を取った



恥ずかしいけど、離したくない


凄く暑いのに、葵の体温を感じられるのが心地いい





ここは凄く不思議な世界



いつもとは違う私になれる気がする



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