コイビト未満
買い物を済ませてホテルへ戻る道
少し距離があるからタクシーで行こうかと思ったけど
私も葵もほぼ同じタイミングで
”歩いて帰らない?”って
考えていることは一緒
もっとこの風に吹かれていたい
この時間が終わらないで欲しい
明日には帰る
いつもそうだけれど
今回は特別
帰りたくなくなる
「菜成歩くの遅い」
「え?あ、ごめん…」
「何ボーッとしてんだよ
転ぶなよ」
そう言って引っ張った手を離す事無く葵は歩く
自然と私も葵の手を握り返していた
こんな魔法
ここでしかかけられない