コイビト未満


「俺が移り住んですぐ、19歳になる頃に莉香と出会いました
莉香は沖縄の病院で看護師をしていました

ベタな出会いなんですけど、俺がたまたま酔い潰れた時に行った病院で看護師をしていて

”未成年のなんだからお酒はダメでしょう”って初対面でこっ酷く叱られました


その時からずっと、莉香から何かインスピレーションを得たのでしょうね
気づけば元気なのに莉香に会いに病院へ行っていました、本当しつこいくらいに。
何度も莉香に叱られました

でもそれが俺は嬉しくて、嬉しくてね」







莉香さんがどこか私と重なって



悠也さんが、葵と重なる




私と葵の話をしているかと錯覚するくらい




その後悠也さんは莉香さんに告白し、付き合うことになった


とてもとても、幸せだったと




「この写真はね、あの場所で…菜成ちゃんが居たチャペルの側の砂浜で撮ったものなんですよ
俺が莉香と付き合った最初の日

俺にとっては特別な場所なんです
だから、菜成ちゃんを見かけた時本当に莉香が戻って来た気がしてしまって…

今冷静に考えたらそんな筈ないんですけどね
莉香は今東京で看護師をしていますから」




一つ一つ、点と点が線で繋がった


疑問に思っていたことが解けてきた





「………莉香さんと遠距離になっちゃったから、別れたんですか?」

「うーん。結果的にそうなんですかね

俺は莉香が東京へ戻ると聞いた時、何も言えませんでした

きっと莉香は分かっていたんだと思います

俺と一緒に生きる覚悟をしてくれていたから
勿論俺だってそのつもりでした

でも、俺は夢があってこの場所へ来た
莉香もそれを知っていました
だからお互い何も言えなかったんです

莉香の人生を背負っていく覚悟もありました
でもその反面当時の俺には経済力も無ければ社会的な地位もなく莉香を不安にさせる要素しかなかった

莉香は女として、人生の岐路に立たされている年齢で
俺がいつになるか分からない写真家としての将来を待ち続けてもらうことは出来ないって思ってしまって

莉香が東京へ戻る話をした時に、俺から別れを告げました」
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