コイビト未満
そんなに私が帰ってきたことが嬉しいのかな
さっきから質問攻め
莢菜、少しくらいはお父さんの相手してあげなさいよ…
「莢菜彼氏が出来たんだってね
お父さん寂しい?」
「いやあ…今に始まったことではないからな
ちゃんとしていてくれたらお父さんは何も言わないよ」
「お父さんも父親なんだね」
「なんだそれ
父さんも父親だよお前たちの」
お父さんは笑いながら冷蔵庫へ二本目のビールを取りに向かった
少し照れ臭そうな表情をしている
「いいなあ莢菜は幸せそうで」
「菜成はそういうの、ないのか?」
「何?そういうのって」
「いやだから
あまり野暮なこと聞くつもりはないけど」
言葉を濁すお父さん
それはお父さんなりの
私への愛情
いつまでも私のことを気にかけてくれている
癒えない傷を掻き毟らないように