コイビト未満
さっきまで強張っていた葵は笑った
「バーカ」
そう言って軽くキスをする
誰もいないとはいえ、ここは外
恥ずかしさが込み上げる
「じゃあ、葵…分かってて………?」
「俺に嘘ついた仕返し」
「葵だって嘘ついてるじゃん!」
「お互い様だよ」
葵は私のことを分かりすぎている
私のことを、全部全部
全部見透かされている
「バカはどっちよバカ………」
「菜成?泣いてんの?」
「泣いてない…バカ」
「バカバカ言わないでくれる?」
「………」
優しく抱き寄せる
葵に抱きしめられるの、凄く久々
この距離、感覚、温もり、香り
全部が葵
葵の全て
凄く落ち着く場所