コイビト未満



風に靡く髪を撫でた



「へえ…見たかったな」

「見せないよ 恥ずかしいもん」





二人きりの屋上




今日は授業もないから

この屋上を通る生徒もいない



葵はそれを知った上で私を連れて来たのか




「高校最後の文化祭、菜成と居れて本当に良かった

一番の思い出になったわ」

「私何もしてないよ…」

「居るだけでいいの
それだけで十分。」





私も少し憧れていた



こうやって、学生時代


制服を着て

男の子と放課後、他愛もない話をしたり


ノートを借りに行ったり

お弁当を食べたり


音楽室から部活中のグラウンドを眺めたり



今思えば、高校生らしいこと

殆どしていなかったな




葵が叶えてくれる


葵は私の願いを知らぬ間に叶えてくれる





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