コイビト未満
ふわっと香った
あの日
文化祭で葵に掛けられたブレザーと同じ
優しい葵の香り
同じ、葵の香り
私に掛けられた三崎さんの上着
また三崎さんが葵に重なった
「え、悪いですよ
今日凄く寒いし」
「平気だよ
研究室に置いている上着があるから
風邪引かないようにね」
同じ洗剤の香り
思わず顔を埋める
また葵に包まれているみたい
「すみません・・・クリーニング出してすぐ返します」
「いいんだよ気にしないで
また時間がある時にでも」
三崎さんの優しさ
なんでもかんでも葵に重ねてしまう
「三崎さん・・・今度また会ってください」
「え?」
「卒論が落ち着いてからで大丈夫です
たくさんお世話になってるのに連絡も返せてなかったし
ゆっくりお礼させてください
三崎さんの論文についても聞きたいです」