コイビト未満
「若い頃だったら……
もっと若い頃だったら”好き”だけで突っ走れたかも知れない
ただ私もそんなこと言ってられる年齢じゃないし
その分悠也だって大人になってる
好きな人と一生添い遂げるってことは
自分だけが幸せって思うような自己満足だけの世界じゃなくてね
相手にも同じだけの幸せを感じて貰えるような自分でないといけないって思うの
あの時の私はそう思えなかった
夢を追って頑張っている悠也をずっと応援したい
そのために、私が隣にいることが必要不可欠だなんて、考えられなかったの
それが悠也の幸せだって
想い合っていても、ずっと一緒にいることだけが幸せじゃないと思うの」
穏やかな顔なのに
どこか切ない
でもその姿は凛としている
今だけじゃなくて
その先も、ずっと先も見て生きていく
女はどこまでも
計算高い生物
「でもね、嬉しかった
こうやって本当運命的に菜成ちゃんに出会えて
悠也がちゃんと夢を追って頑張ってるんだってことも分かったし
菜成ちゃんは自分が思ってるよりずっと素直で素敵な女の子よ
自信持って今思っていること、伝えてみたら?
さっきみたいにね
顔見てたら分かることもある
けど結局確実なのは言葉にして伝えることなんだよね」
「はい…………」
「そんな顔しないで!
今までのことに、一回区切りつけることも大事
一つずつ大人になっていくんだよ」