コイビト未満



部屋を出て



乾いた筈の涙を拭った





一度呼吸を整える




ずっとずっと前から




もしかしたら私と出会う前から決まっていたことなのかも知れない




私なんかが介入していい話じゃない







元の生活に戻って



何もなかったことにしよう



元から、何もなかった





葵との時間を、忘れる




けどすぐ葵は





いつでもそんな私の邪魔をする





「菜成?

なにしてんの」


「あ……おい…」






三崎さんの部屋を出てすぐの横断歩道




久々に見る葵の姿


久々に聞く葵の声




葵の全てが久しぶりで


どうすればいいか分からなくなる




そりゃここは、三崎さんの部屋でもあり
葵の部屋でもあるんだから


葵がこの場所に帰ってくるのは当たり前のことで


学校帰りの葵とばったり出くわしてしまうシチュエーションだって珍しくない





だけど今日は………



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