コイビト未満
「菜成なんでこっちにいんの?
俺んちにいた?」
「ん…ちょっと三崎さんに用があって」
真っ直ぐ私の目を見ている葵
いつもそう
絶対目を逸らさない
葵から逃げられない
私が三崎さんと葵の部屋に居たこと
なんで?って聞きたそうな顔をしている
すごく寂しそうで、哀しそうな顔
そんな葵の顔なんて見てたら
また、気づかない間に泣いちゃいそう
駄目だ、駄目だ
ずっと心の中で唱えている
「ごめん、急ぐから」
青信号に変わり、走って自分の部屋へ向かった
葵が引き止める間もないくらい
ほら、やっぱり
また涙が流れてる
こんな顔、葵に見られてないよね?
絶対駄目だ、絶対
葵のことはもう
最初からなかったことにする
それでいいって思ったばかりだったのに