コイビト未満
「菜成、追わねえの?」
「え?」
呆然と立ち尽くす俺の背後から聞こえる声
「あんた…兄ちゃんの研究室の」
「お前らが派手にやらかしてるのを偶々見かけただけだかんな。盗み聞きじゃねえぞ」
兄ちゃんの研究室の後輩で
菜成の高校の同級生でもあって
確か…利根とか言ってたな
ここは学校の敷地内
形振り構わず大声を出してしまった自分
偶然通りかかった利根に、見たくなくても見られていた
ふと我に返る
「少し話すか。顔貸せよ」
「でも…」
「今は菜成一人にさせとけ。追わねえのって聞いといてだけど。梨羽も居るし大丈夫だから」
利根に連れられて人気の無い教室へ連れて行かれた
本当は菜成を追いたい
でも、今はダメだってこと
俺より長い付き合いのこいつだから分かっているんだと思う
今は、それに従うが吉