コイビト未満




部屋の前で蹲って泣いていた





容赦なく鳴る携帯



葵からの着信

何度も何度も鳴り続ける




もう、出ちゃ駄目なのに






『もしもし菜成?どこ?』




息を切らしている葵





私を探してる








「ねぇ葵。もうやめよ?」

『え?』





大きく深呼吸した





私が最後に葵にしてあげられること





それは、優しく突き放すこと






最低と思われてもいい





全力で葵を突き放して





葵が私の事を嫌いになってもいいから



私という存在を人生から抹消して




もっと素敵な女のコと素敵な恋が出来るように








「もうやめようって。

葵の将来私なんかでダメにしたくないしさ。

そもそも…葵と今まで一緒にいたのも、単なる暇つぶしだから…


私…葵のこと、最初から本気で思って無かったし……全然好きじゃないし…だから…だからさぁ…」





必死に涙を堪えて






葵が傷付いてでも私を忘れられるように












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