夢ノ夢子のズルい罠
「遅刻しそうだったじゃないっ――ちゃんと起こしなさいよねっ――」
幼馴染み風、ツンデレ味でコウイチに迫る夢子――。
「ちゃんと起こしたじゃないか――窓から――」
にべもなく言うコウイチ――。
コウイチ家の隣の更地に夢ノ家が住宅を建て、以来、親同士が妙に気が合い、現在に至る――。
幼馴染みなの、と問われると、微妙な親密度と時間――。
まぁ、小中学生の頃は互いに部屋を行き来してはいたが、ここ最近は「お約束」通り、往来はない――。
共に、南面のはき出し窓にバルコニーがあり、コウイチの部屋の西側、夢子の部屋の東側にそれぞれ腰高窓が、互いに向かい合っている――。
都会の住宅の性で、窓に腰掛け、躰を伸ばせば、相手の窓ガラスを叩く事は可能ではある――。
コウイチが、「起こした」と言ったのは、そういう事であった――。
「起きたかどうか、ちゃんと確認しなさいよねっ――」
「うるさいなぁ、遅刻しないで、いつもの様に親衛隊の皆様に囲まれて御登校なされたんだから、いいじゃないか――」
嫌味スパイシーテイストながら、淡白に語った――。