夢ノ夢子のズルい罠
「まぁ、いいわ――今日はこの位で許してあげる――」
「ってか、さっきから何描いているのよ――」
「んっ、何って、チエミとキョウコだよ――」
スケッチブックを夢子が見易い様に反転させるコウイチ――。
窓辺で談笑する二人の姿を、鉛筆の線とハッチングによる陰影で捉えた日常の景色――。
顔は若干、萌え絵風にアレンジされているものの、チエミとキョウコの特徴はちゃんと掴んで、誰が見てもその二人とわかる――。
「あ、相変わらず上手いわね――」
「いや、上手いのは皆同じだよ――そこに、自分なりの信念と個性がないと、絵師にはなれないんだけどね――」
再び二人を描きながら、少し冷めた口調でコウイチは言い、より深く陰影を施してゆく――。
「そっか、コウイチの夢は萌え絵師になる事だったわね――」
「――――」
「な、何なら、モデルになってあげてもいいわよ――キャハっ――」
瞳を輝かせ、惜しげもなく体をコウイチに寄せ、迫る夢子――。
「夢子、そうゆうの――いいから――」
坦々と突き放すコウイチ――。
「何よっ、ぷいっ――」