夢ノ夢子のズルい罠
「チュッ――」
カズヤ君の首に両手を絡め、まだ何も経験していない頬に唇を乗せ、スパイスとして僅かに唾液を分泌させた夢子――。
ファイナルジエンドオブメランコリーソフティーキッス――。
「はぁ――――」
悩ましい吐息を残し、カズヤ君と絶妙な距離を置いた夢子は、火照った目で躰を縮こませ、盛りつけに入る――。
「こ、こんな事するの夢子、カズヤ君だけだからねっ――」
「む、むぉぉぉぉーーっ――」
「青春一直線っっっっ――」
訳のわからない雄叫びを歌い、カズヤ君は走り去ってゆく――。
「行っちゃった――」
一仕事終えた夢子は、「至高」の息を吹き、転落防止の強化ガラスフェンスに背中を預け、空を見上げた――。
「綺麗で、目の毒だなぁ――この青は――」
誰もいなくなった屋上――「佇む」夢子――。
無駄に青い空――。
爽やか過ぎる風の匂い――。
揺れ、舞い踊る切ない髪――。
そぐわない、透明で強靭なガラスで構成されたフェンス――。
「ふぅ――」
「これで――」
「七人目か――――」